2025.3.26
背景
エプソンは塩尻市と共創を進める中で教育現場での困りごとのヒアリングの機会をいただき、「学校や教室に通うことが難しくても学習はしたい」生徒がいることを知りました。自社の製品・サービスなら「生徒がどこにいても、教室と同等の学習ができる環境を提供できる」と仮説を立て、塩尻市の教育委員会やICT支援員と議論を重ねました。そこで、自社のサービスであるEpsonConnectを塩尻市の小中学校に導入し、遠隔での教育支援の実証を開始しました。
活動概要
エプソンは先生のいる学校と生徒がいる家や学校以外の学びの場にプリンターを置き、EpsonConnectで先生と生徒が自由に学習教材やお便りのやり取りができる環境を作りました。先生は生徒一人ひとりに合わせた学習教材・学校からのお便り・生徒へのメッセージを送り、生徒は学習したプリント・メッセージへの返事を送るという双方向のやり取りが始まりました。先生と生徒の状況に合わせて、電子データを相手のいる場所のプリンターに紙で出力したり、手書きの紙を電子データにして相手のデバイスに届けたり、紙に想いを書いて(描いて)文通のように伝え合ったり、というような活用がされました。
実証結果
検証の結果、本サービスが教育現場に提供できる価値として、以下の3つがあることが分かりました。
1.紙に手書きの文字やイラストを書く(描く)ことで、自由に想いが伝えられる
<サービスを利用した先生の声>
『直接会うと会話が続かない生徒でも、手書きの文字やイラストをかいて今まで知らなかった一面を知ることができた』
・紙のやりとりでは生徒のペースでやりとりができるので、生徒に合わせたコミュニケーションができることが分かりました。

2.日々の連絡や学習情報をデータとして生徒に送ることで、業務のすき間時間でリアルタイムにフォローができる
<サービスを利用した先生の声>
『本当は会いに行けると良いのだが時間が限られている中で紙でのやり取りが選択肢の1つとして増えたのが嬉しい』
『近くにプリンターがあっていつでも印刷できることで、学校以外の学びの場にいる生徒一人ひとりの学習状況に合わせた教材を印刷できてとても便利。以前は職員室まで印刷物を取に行くことが面倒なこともあった』
・実証開始前は先生の業務負荷軽減は想定していませんでしたが、先生が生徒に向き合える選択肢が広がるということが分かりました。

3.送った情報が紙に印刷されて見える形になることで、想いを確かに届けられる
<サービスを利用した先生の声>
『“生徒が自分の想いを整理しながら一生懸命書いた“ということが受け取った紙から伝わってきた』
『自分(先生)が送った手書きのコメントが、生徒と親の間の会話が生まれるきっかけになったと聞いた」
・紙のやりとりでは個性が現れ、目に触れるため相手の想いが伝わりやすいことが分かりました。

実証の結果から、忙しい先生と、生徒との間のコミュニケーションに紙という手段が有用であり、学習の支援だけでなく、”生徒の知らなかった一面を知ることができた”という人間関係のサポートにも一役買うことができ、エプソンとしても新たな発見がありました。
塩尻市の教育現場での実証を通して「ちょうどいい距離感のコミュニケーション」「温かみのあるコミュニケーション」「一人一人に寄り添った支援」など紙だからこその良さを実感いただくことができました。
今後の展開
今後は検証の中でわかった使い勝手の課題を改善し、さらなるサービスの品質の向上につなげます。将来的には「病気や怪我により休学を余儀なくされている生徒」 「母国語が外国語のため教室で授業を受けるのは難しい生徒」への展開も視野に入れて検討していきます。
エプソンは様々な理由によって教室以外で教育を受けている生徒と学校にいる先生を繋ぎ、さらなる教育の機会・質の向上、モチベーションの向上につながるソリューションとして、「生徒がどこにいても教室と同等の質の教育が受けられる」サービスを提案していきます。